ジェラルド・M・ローブ『投資を生き抜くための戦い』22 損をして得をとる

22 損をして得をとる

 損失を受け入れることは、資金の安全を確保するうえで最も重要な方策である。これはまた、投資家が知らん顔を決めこみ、実行したがらない行動である。
(中略)私が学んだほかの何にも増して重要なことは、損失を早く受け入れることこそ、成功への最初のカギだということだ。

 「損切りが難しいなどと言っているうちはシロウトです」という趣旨の台詞は、いい本では必ずと言っていいほど出てきますね。

 ある程度の元本割れに対して常に心の準備をしておかなくてはならず、それが現実になったときは利益から差し引いて、アカウントが実際に何を達成したのか正確に把握しなければならない
(中略)
 いったん下がったものは必ず上がると思うのは、大きな間違いだ。

 評価損を「実現損じゃないから大丈夫」と思って塩漬けにしてしまうのは、典型的なダメパターンです。私も経験済みです。

 人は杓子定規なルールなどではなく、自分の頭を使い、論理と理性でことにあたるベきだ。(中略)
 まず最初に、現実に損失が問われるすべてのケースで、投資額が10%減ったらまず十分に注意しろ、と言いたい。通常は、そこで損切りするベきだ。
 同じ株を、あとで買い直すことになるかもしれない。しかしいったん売却してしまえば、先入観を排除したまったく異なる心理状態でいられることに気づくはずだ。ひょっとするとあなたはそれを買い戻さず、別の株を買ったほうがいいと思うかもしれない。ポイントは、いかなる感情も介入させず、完全に冷静になって投資を見つめられるかどうかだ。ポジションから先入観を受けないほうが考えに集中できるので、10回のうち9回は、下がった株は売ってしまったほうがよい。

 私自身は投機的ポジションの機械的損切りの基準は-8%としていますが、-8%か-10%かの差は特に重要ではありません。自分の経験上は、一度機械的に損切りできるようになると、基準の上でも(条件によっては)下でも切れるようになります。

 買った株が元値の25、33あるいは50%まで減ってしまったとしよう。(中略)私としては、一部を売却することにするだろう。それがポジションの1/4になるか、1/3か、1/2までに至るか、それは分からない。だがとにかく一部を処分して、次に市場が買い気配になったときに、売った分を買い戻すかどうか検討すればよい。たぶんあなたは、買わないだろう。

 -10%で損切りできなかった場合の話。とにかく一部を売れとのこと。これはどちらかというと心理的なテクニックに属することかもしれません。全部一気に損切りできない人も、たとえ1/4でも売ってしまうと、一度やってしまったことですから、次も売りやすくなります。

 そして、損切りしたとき(手数料分だけの損を承知の上で)売った分をすぐ買い戻したくならないとしたら、今までポジションを持っていたのは、冷静な判断によるものではなくて、行動経済学でいう現状維持バイアスと保有効果に捕らわれていただけだということです。

 では、値上がりして大きな含み益を持った株はどうだろう? この章は、天井を見極めることではなく、「損」を取ることで利益が目減りしすぎるのを防ぐことがテーマである。私は損失のときと同じシステムを勧める。
 もし株価が相場の最高値から10%下がったら、部分的に処分することを考えたほうがいい。

 ここで言っているのは、自分の買値を市場が気にすることはないので、利の乗ったポジションだからといって損切りと違う基準を用いるのは合理的でない、ということでしょう。

 これに関しては、需給のみに基づく純粋な投機ポジションなのであれば、この基準をそのまま適用するのがよいと思います。

 ファンダメンタルズに基づく見通しがあるのであれば、利を伸ばしていくためには、文字通り実行しない方がいい場合も多いと思われます。不合理な心理会計であるからこそ、いわゆる「握力」を強めるのに利用できる、という側面もあるからです。

 自分の損失を監視して損切りできる人や、収益を把握して減少しそうなときには一部を処分できる人は、長い目で見ると一番成功する。

 初歩であると同時に奥が深い損切りテーマでした。

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