9 証券プログラムの「してはならないこと」
実践的な基本方針としては、選択した株式が見込み大でないかぎり、けっして投資してはならないということだ。単に「インカム」のための投資、「資本を運用しておくため」の投資、そして「インフレに対するヘッジ」としての投資は、完全に問題外である。
ここも「投機」しなければならない、という大原則の繰り返し。
これらの方針のもとでは、よく吟味したうえで儲けの可能性が大きく、明らかなリスクをもしのぐと判断される場合を除いて、どんな種類の証券も、いかなる立場でも買ったり保有したりするベきではない。リスクについては、詳細な検討が必要だ。
「いかなる立場でも」というのはかなり強硬に感じますが、経験上も、分散しておこうとか、ただ買っておこう、という意識で買ったもので、大きな損失を出したことはあっても、大きな利益を得たことはないですね。
投資を行う際には、単一の条件に全資金のかなりの部分を投下したとしてもリスクに見合うと思えるほど、公算が大きくなくてはならない。それと同時に、全資本からほどほどの割合を投資する場合でも、資金すベてで目標のリターンを達成できるほど潜在利益が大きくなくてはならない。
これもよく考えるとすごい条件。やはり倍になると思えるぐらいの案件でないと検討に値しないということになりそう。
別の表現に置き換えると、いったん十分な力を備えたら、分散投資は望ましくないということだ。ひとつか二つ、多くても三つか四つの証券にとどめておくベきだろう。資本の大部分をリスクにさらす必要をなくすため、銘柄は厳選され、買うタイミングもぴったりで、利益の可能性の非常に高いものであるベきだ。
このポリシーに従えば、可能なかぎりベストのタイミングで最良の株だけを扱うことになる。こうすれば二つの方法でリスクを軽減できる。まず選択時に慎重になること、そして高額の現金の蓄えを置いておくことである。最少の株式に集中投資することによって、選択にかける十分な時間が確保でき、重要な部分のすべてを把握することができるのだ。
主力のポジションは「ひとつか二つ、多くても三つか四つ」という原則は守ろうと思います。自分の場合は、見られる時間が少ないという制約から、自然とそのようにはなっていましたが。
この方針は、分散投資を避けるばかりでなく、ときに資本を使わずに長期間保有することも含んでいる。損失の発生する平凡な投資を、利益を生み育てる特権階級に昇格させるには、割安株を探し出さなければならない。だが、それはやたらに見つかるものではない。安値のチャンスは主に、大多数の証券バイヤーが恐れて手を出さないときに必然的に訪れることも知っておくといい。
その一方で、証券が全般的に人気で熱心に買われるときは、おのずとチャンスはなくなる。過剰投資と自信過剰という二つの「過剰」が幅を利かせる時期、優秀な投資家が自分の資本を遊ばせておくのは当然のことである。利益と収入が容易に得られそうだと侮っていると、ときに手痛い仕打ちを受けることになる。
短期投資を推奨するこの本ですが、当然ながら長期の逆張り的な思考もないわけではないということ。ちなみにこの部分、安値が危険ということになっている明らかな誤訳があったので、原文を確認の上、2箇所だけ修正してあります。
投資の戦いに生き残るための重要な概念は、投資家は現在より最終結果を見据えた考え方をしなくてはならないということである。個々の株や、あるグループの株の動きから、含み益を100%実現益に置き換えるのは不可能だ。そのような試みは、おのずと投資プログラム全体の破綻につながる。分別ある投資により、良い年や悪い年を通じて断続的でもそこそこの平均利益を上げることができれば、それは大した成績といえるのだ。
ここでの議論は一見かなり投機的に思えるかもしれないが、実践ではほとんどの投資家が従っている方針に比べて、はるかに穏当で安全なものである。
”Last Man Standing”というか、このあたりも長期的な思考そのものの気がしますね。この本の「短期」はあくまで考えずに放置することの反対(≒投機)と割り切って、「短期」と「長期」を対立するものと考えない方がよいかと。
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