そんなことはなく、ハイテク株のアウトパフォームは2008か2010あたりが開始地点と見るのが正しい https://t.co/cmbVA3GeC9
— 株式投資お嬢様 (@kutsumigaki_oji) June 27, 2020
この見解に賛成というツイートを書こうとしたら、前後に話が次々繋がって延々と長くなったので、さらにまとめてブログ記事にもしておく。
GAFAM・テスラ・エヌビディア・Netflixあたりのいわゆる米国ハイテク株のアウトパフォームがいつまで続くのかという問題は、人類文明のフロンティアがどこにあるかという話に帰着すると思う。
文明の累積的進歩が人口自然増のスピードを振り切ったのは、産業革命の18世紀半ば頃。そこから200年ばかりの間、20世紀半ばぐらいまでは、物理・化学・生物(≒農業)のあらゆる分野にフロンティアがまだたっぷりあった。
だがそれ以降、1950年と2020年の現在は、物理・化学・生物で考えると、そんなには変わっていないだろう。
ビルは鉄筋コンクリートでできていて、飛行機は石油燃料で飛んでいて、車はタイヤで走っていて、人は土で育った小麦や米を食べていて、抗生物質はあるがウィルス・細菌にはやっぱり困っている、究極兵器は水爆のままだ。
もちろんそれらの分野にも進歩はあったのだが、20世紀半ば以降の主なフロンティアは、以前のムーアの法則の記事に書いたように、微細方向にあったわけだ。具体的には半導体・エレクトロニクス・コンピュータ。何桁も変わり質的な変化をもたらすような大きなフロンティアは、ほぼそこにしかなかった。
しかし、2010年あたりから、その状況にまた変化が起きている。微細方向への進歩は、まだ続いてはいるものの、限界が近づいている。
10年前のゲーム機・PC・スマホは、現在のそれとそこまでは違わないだろう。もちろん違うのだが、20年前や30年前との違いに比べると、地味で大人しい直線的な進歩だ。
ここ10年の新しいフロンティアは、もちろん物理・化学・生物的なものではなく、半導体・エレクトロニクス・コンピュータそのものでもなく、その上での情報的な変化、つまりソフトウェア・データ・AIの進歩だ。
たとえば、アマゾンの流通が他の会社よりうまくやっているとしたら、それはアマゾンのトラックが他社より良いタイヤを履いていたり良いガソリンを使っているからじゃない。アマゾンのサーバに他社より良いデータがあり、良いソフトウェア・AIが動いていてトラックに指示を出しているからだ。
テスラの時価総額がトヨタを超えうるのは、テスラ車のタイヤ・モーター・シャーシが素晴らしいものになるかもと思われているからじゃない。先行している走行データや、それを元に作られる自動運転のソフトウェア・AIが素晴らしいものになるかもと思われているからだ。
いわゆるハイテク株の隆盛という現象は、この人類文明のフロンティアがソフトにあるということと軌を一にしている。AMZNをはじめとする主なハイテク株のアウトパフォームが本格的に始まったのは、やはり2010年ごろからだろう。
景気の循環と相場全体の上下、あるいは個別株の上下はもちろんあるにしても、ハイテク株アウトパフォームの本格的・全面的な終わりが来るとしたら、このソフトフロンティアの開拓が終わるか、もっと進歩の早い別のフロンティアが発見され、それに抜かれる時だと思われる。
それがあるか、少なくとも近い将来にはないだろう、というのが私の予想だ。2012年を起点とする現象としての第三次AIブーム自体は近いうちに終わるかもしれないが、ソフトウェアフロンティアはどちらかというとまだ開拓が始まったばかりだ。
他の分野にソフトウェアからフロンティアを奪いうるような革新的な進歩が起きる可能性はあるか? それほどのインパクトを持ちうるのは、
- 核融合エネルギーの実用化
- 不老不死化に近い再生医療
- 火星・木星・小惑星帯へ経済的に行き来できる宇宙開発
ぐらいしかないと思う。いずれも10年、20年やそこらでは無理だろう。
ソフトフロンティアは終わらなくても、ビッグテック企業が終わる可能性については、長くなりすぎるので別の機会に。
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