ムーアの法則は人類史上一度きり

 ムーアの法則は人類の歴史上後にも先にもない一度きりの出来事である。

 光速はすごく速いようでいて、実際にはメチャクチャ遅い。地球上だからこそほとんど無視できるが、それでもネットで格ゲーのような人間レベルのことをしようとするだけで問題になる。

 地球外になるとまったく問題外であるし、しかもこれは根本的な物理法則レベルでどうしようもない。

 したがって、実用上利用できる範囲に関しては、ファインマンの有名な講演的な意味で下限が問題になるが、それだって無限にあるわけではない。

 物理法則の根本がなんであれ、究極の下限はプランク長、10の−35乗あたりには確実にある。これはもちろん途轍もないスケールではあるが無限ではないし、底の底まで全部使い切れるわけではない。現在ですらすでに壁に突き当たっている部分がある。

 量子コンピュータやら何やらでブレイクスルーがある可能性はもちろんあるが、それがあるとしても、ここ数十年のムーアの法則として知られる、下方向への順調な発展の余地は、今後の数十年に同じように残されてはいない。

 つまり、現在ある程度の年齢の人が見てきたコンピュータの急激な発達は、人類史上後にも先にも二度とない特別な出来事であるということ。それに伴って起きた経済的な出来事もそうだということである。

 一例としては、現在GAFAMとか呼ばれている巨大IT企業群の未来についてである。彼らは、ガレージの一角から突然現れ、既存の巨大企業を瞬く間に抜き去って、驚くような成長を遂げた。ITバブルのような現象も起こした。

 だからと言って、彼らもまたこれから現れる別のIT企業に瞬く間に抜き去られていく、と予想する人がいたら、それはほぼ確実に間違っている。

 すでに今日でも問題になり始めている政治要因などで弱体化する可能性はもちろんあるが、彼ら自身の誕生・成長過程の背景にあった技術的余地は、現在はもう存在しないのである。

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