原題”Money: The Unauthorized Biography”(お金:非公認自伝)。邦題はあまり内容を表せておらず、ピケティ本の便乗以上のものではない。
「お金はモノではなく社会的技術である」というテーマで歴史から現在そして未来まで論じている。
今現在、多少なりとも勉強していて、たとえば金本位制や現在のユーロの何が良くないのかをわかっている人には、主張自体はごく当たり前のようにも聞こえると思う。
正直、古代のところは眉唾物だし、我田引水に感じる部分もあるが、全体として素晴らしい。
一番本質的と思われる箇所を一箇所だけ抜粋。
ものが固体として結合し、私たちがよく知っている形をしているのも、目に見えない電磁気力が働いているからなのだ。
マネーもまったく同じである。すでに見たように、硬貨など、実際に手に触れることができて、腐ったり壊れたりしない通貨がマネーであり、その上に債権と債務という手品のような実体のない装置が作られているのだと、どうしても考えてしまいがちだ。だが、現実はその真逆である。譲渡可能な信用という社会的な技術こそが、基本的な力であり、マネーの原始概念なのである。
ヤップ島の石貨「フェイ」、中世イングランドのタリー、マネーの秩序が崩壊した歴史上の無数のエピソードに登場する銀行券、小切手、代用貨幣、私的な信用書、そして、現代の先進国の銀行システムが使っている膨大な電子データー──これらはすべて、常に変動し続ける何兆という債権債務関係の残高を記録するための代用貨幣にすぎない。


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