5 投資で値上がり益を得るには
少なくとも最初は主力上場銘柄に限ると決めたら、次のステップは、「価値の上昇への投資」である。すべての買い付けは、インカムゲインと値上がり益をひとくくりにして、トータルでいくらのリターンがあるかという基準で扱われるベきだ。
キャピタルゲインとインカムゲインを別のものだと考えるのは、無意味な心理会計ということ。個人投資家としては、最近言及した『出金のススメ』のように、そうとも言い切れない場面もありますが。
大きな利益を期待して出資を行う以外の方法で、成果を上げようとしても無駄である。ただ単に「投資しておく」とか「配当」のために買うのであれば、札束で寝かしておくほうがましだ。これはかなり重要なことで、この点だけでも成功するプロと損を出す素人の最も大きな違いがある。このルールを守るだけで、危険なマーケットに踏み込まずに済むこともあるのだ。
この本では、投機をする・思惑を働かせる・考える必要がある、とにかく何も考えずに安心していてはダメだという原則が貫かれています。この原則から演繹できる部分が結構あります。
ことを始めるには、実践から学ぶ以外にない。ほとんどの投資家にとって、最大のハンディキャップがここにある。経験不足なのだ。
この後で薦められている初心者向けの実戦経験法は、要約すると「その時最も有力な銘柄のロングorショートポジションを(限度額を決めて)ひとつだけ取り、閉じるまで次を始めることはできない」というもの。知っていればその通りやればよかったなあと思います。
当然ながら、投資に充てる時間を作らなくてはいけないということでもある。まことに理屈にかなっているのだが、多くの人にとっては意外に思えるらしい。
(中略)
投資には時間をかけることが必要で、そうすることで余裕資金は将来のための頼りない資産で終わるよりも、はるかに強力な蓄財の基礎となり得るのである。
(中略)
試行錯誤を繰り返す学習は、明らかに時間を要する。その一方で資金の残りを遊ばせておくのには、それなりの抑制力がいる。
(中略)
多くの場合、財産を維持したり増やしたりすることにかける時間で、本職に100%専念するよりもたくさん稼ぐことができるのだ。
(中略)
時間を惜しみなく注ぎ込むか、まったくやらないかのどちらかでなくてはならないからだ。中途半端というのはないのである。
トレーディングを学んで、短期に賭けるのか、それとも長期に投資を続けていくのか?
われわれは値上がり益を目的として投資をするのであって、ポジションを保持する時間は関係ない。(中略)私なら、どちらかといえば短期を選ぶ。そのほうが迅速に経験を得やすいからだ。
短期の投資はいったんマスターしてしまえば、長期のたなぼた利益や大損失よりもはるかに信頼のおけるビジネスらしくなる。「熟達」していなければ、首尾よく買ったり売ったりし続けることができないからだ。
立て続けにトレーディングをこなしていかないと、自分の能力も、その産物である安全性も、確信することはできない。回転が早いほうが安心できる。視点を新たにする機会も多い。底値近くなるまで、理由も分からず下がるのを見ている不安も避けられる。そのほかにも、利点はたくさんある。ほとんどの人はそれでも、長期の投資のほうが安心だと主張するかもしれない。しかし1921年以来、私が見てきた何千件ものケースを参考にいえば、これは誤りである。
乱暴に言えば、塩漬け貧乏よりは損切り貧乏の方が経験を積める分マシということでしょうか。
「短期」といっても、トレーディングを速やかに終わらせなければいけないということではない。ちゃんとした理由がないかぎり、ポジションはやたらと閉じてはいけない。多くの「長期」トレーダーは、一時的にすぎないと思ってトレンドが変わるサインを見過ごしてしまう。正しいこともあるが、最終的には読みを誤り、大きな損失を強いられることが多い。
短期の方法ではトレーディングを手仕舞うには理由がなくてはならず、状況が変わった場合はポジションを再開することもできる。ときにはそこから利益を上げることができ、ときには損になることもあるが、その場合は、ただ単に保険料を払ったということだ。
長期の買い手はたまに優良物件に当たったりして、自分のことを大した投資家だと考えてしまう。たいがいはその後にショックを受けることになるのだが、ときには儲けを失わずに済む幸運なケースもある。
短期vs長期は永遠のテーマのひとつですが、何も考えずに安心していてはダメという原則に貫かれるこの本では、前者に理があるということ。
トレーディングへの参入は、短期の原則にのっとって行われるベきである。
(中略)
最良の長期の買い物は、強気のインディケーションが短期で連続したことから生じたものもある。決定的な売りタイミングは、初めは無難で何気ない最高値のように見えるものだ。
この「決定的な売りタイミング」というのは、おそらく長期のド天井という意味か。少なくとも、投資では「短期は長期を兼ねる」ことはあっても長期が短期を兼ねることはない、ということは言えそうです。
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