よりよい計算などというものはない

 2010年からアマゾンに長期投資している最大の理由は、Amazon Web Services(AWS)を知って、これは打倒不能ではないかと思ったからです。

 何の本で読んだ記述か忘れましたが、石油会社の長年にわたる努力にも関わらず、ガソリンの消費者を囲い込もうとする試みは、一度として成功したことがありません。

 本質的にコモディティにしかなりえないものがあるのです。ガソリンはそのひとつです。地質学的・化学的制約により、ガソリンはガソリン以外のものにはなりえないからです。

 再生エネルギー・蓄電・省エネ等の各種技術の発達により、ガソリンが利用されなくなることはあっても、本質的に優れた「よりよいガソリン」が発明されることは、もうないでしょう。

 計算力はガソリン同様、現代文明に1日も欠かせない必須の資源で、しかも本質的にどれでも同じコモディティです。現実のコンピュータが発明される前から、計算の理論は少しも変わっていませんし、変わってはいけません。

 Amazonのクラウドで計算したら2+2=4にしかならなかったけど、○○○の画期的なクラウドで計算したらなんと2+2=5にもなったよ! やったぜ! ……なんてことはありえませんし、あってはならないのです。

 したがって、計算力を売るビジネスは、ガソリンと同様に根本的な差別化は不可能であり、標準化とスケールメリットによる先行者利益を持つAWSを完全にひっくり返すことは誰にも不可能です。

(ただひとつ可能性のあるイベントは、量子コンピュータの実用化ですが、今回その話はしません。しかし、量子コンピュータが実現されるとしても、やはりアマゾンもそれを導入するでしょう。)

 ベゾスはインフレ調整後でもジョン・ロックフェラーと並ぶ富豪となり、アマゾンもスタンダード石油のように政治的に分割されるまでは止まらないと思っています。

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