「どうぶつ」バブルの終焉


 『NOPE/ノープ』という映画でチンパンジーの恐怖シーンがあったこと、さらに来年『PRIMATE』というチンパンジーホラー映画が予定されているらしいことを知った。私は直感的に、20年前だったらこれらのシーン・企画はなかっただろうなと思った。

 「どうぶつ」の精神的地位は、過去数世代、1世紀弱にわたってバブルだったように思われる。

 人間が野生動物の脅威を克服して以降、動物園・水族館・テレビ映像で、事実上初めて「どうぶつ」を目にしたことにより目新しさがあったこと、二度の世界大戦と核兵器の誕生と進化論の膾炙で「にんげん」の精神的価値が相対的に暴落したことが一番大きい要因だっただろう。

 脳や精神の理解がまだまだ未開で神秘の余地が残されていたこと、子供が減り、代わりに(?)ペットを飼う余裕のある家が増えたこと、すべてがプラスに作用していたように思われる。

 しかし、これら全てが、90年代かその前後を頂点に天井を打って、下り坂に入っているように思われる。まだまだ下り坂に入ったばかりなので一見そうは思えないかもしれない。

 だが、今それなりの歳の人間は、ザトウクジラが人間より賢くて、地球を一周する愛の唄を歌っているとか、ボノボは平和と愛の猿だとか、今思えば滑稽なほどの動物の持ち上げが、かなり大真面目に言われていたのを憶えているはずだ。

 それと同じ、あるいは匹敵するようなことが、今から、ゼロからもう一度発生すると真面目に思う人は多分いないと思う。それらはもちろん極端なケースだから今も憶えていて話題にできるのだが、その極端を可能にできたベースの高さというものがあって、そのベースはもっと広く全体が動いているのだ。

 まもなく本物より安くて賢くて可愛いAIロボペットが現れることで、この傾向は決定的になるだろう。動物愛護意識はなくなるわけではないものの、少なくとも霊長類あるいは他の動物一般を持ち上げて人類をくさす意識は、完全に消滅に向かうだろうと思う。

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