AGIは人間の扱いの下限を奴隷から害虫に戻す

 全ての能力において人間を上回るAI・ロボット、すなわち汎用人工知能(AGI)が実現したとき、ひとつ確実に起きることがある。人間の扱いの下限が「奴隷」から「害虫」に戻る、という変化である。

 狩猟採集時代のようにリソースが限定された時代では、敵対する人間は基本的には殺すものだった。直接に殺害はしなくても、生きていけない土地へ追いやれば同じだった。

 農耕社会になると、たとえ敵対部族の男であっても、殺すよりは労働力すなわち小作農や奴隷として生かしておいた方が得になった。もちろん狩猟採集時代からの本能に基づいて虐殺も行われただろうが、少なくとも合理的に考える余裕がある限りはそうだった。

 しかし、どんな人間よりも優秀で、しかも安価なロボットが登場した場合、この農耕の発明以来一万年近く続いていた前提は再逆転する。

 奴隷よりもロボットの方が安くて優秀なのであれば、もはや敵対的な人間を生かしておく理由はなくなる。その影響は長期的に見て、極めて重大だろう。

 AIが発展すると階級移動が難しくなり「ネオ中世」が始まるかもしれない、という話はすでに言われているが、この考えに基づけば「中世」という単語に無意識に内包されている「長期に固定された被支配階級の人間」というものは、少なくとも経済的には成り立たないはずなのだ。

 現代には基本的人権という考え方が一定程度確立しているので、いきなりそうはならないだろう。しかし、イデオロギーはしばしば現実を追認する形で作られるものだ。

 「平等」や「基本的人権」という概念が、経済的に割に合わないものになれば、それを否定する新しいイデオロギー・思想が必ず作られる。

 もちろん、それは一朝一夕で起きることではないだろう。しかし、その萌芽となりうる兆候には、今から厳重な警戒を払うべきだと思う。

 いま具体的に予測できる範囲では、環境保護運動や動物愛護運動、あるいは創作物(のキャラ)やAIの倫理とか、そういったものの一部からそれは始まるだろう。

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