四割打者の絶滅と投資環境の進歩

 この話、比較的近い頻度で2回見た(前回のは鍵垢のものだったのでここには載せない)ので、二度あることは三度ある的に需要があるかもしれないと思ってまとめておく。

 スティーヴン・ジェイ・グールドの「なぜ4割打者は絶滅したか」というエッセイの議論が、この話にぴったり当てはまると思う。元の議論は投資ではなく生命の進化に関するものだが、ケイ氏のツイートに近い野球を使った説明で、私の理解で要約すると以下のようになる。

 昔はいた4割打者がいなくなった理由は、凄い選手がいなくなったからではなく「選手の平均レベルが上がったから」である。

 昔も今も凄い選手はいる。むしろ、技術や環境の進歩の分、昔の凄い選手より今の凄い選手の方がもっと凄い。ただし、それはあくまで絶対評価での話。

 無数の人数からより抜かれた最高の天才は、昔も今も個人としての限界に比較的近いところにいるから、技術や環境の進歩による全体底上げの恩恵は、凄い選手よりも平均的な選手の方が多く受ける。

 そして最高打率のような成績は、凄い選手が他の選手一般と競った結果、つまり相対評価であるから、単純化すれば「人間の限界 – 平均レベル」であり、平均レベルが上がると、むしろ下がるのである。

 株式投資は全体としてゼロサムではなくプラスサムではあるものの、凄い投資家があげる成績は、やはり市場平均(≒他の平均的な投資家達)と競って上回った差分である。そして、投資に関する情報や環境が整備されて平均レベルが上がっているのも間違いないと思われる。

 たとえば、ウォーレン・バフェットは今もう一度生まれ直してもやはり凄い投資家になるであろうが、昔に生まれた実際のバフェットほどの成績は残せないだろうと考えられる。

 もっとも、投資は生物や野球より物理的限界の影響は少なそうなので、たとえばAIの進歩などでトップ中のトップだけがめちゃくちゃ勝つようになるという可能性も絶対にありえなくはなさそうだが、どちらにしても個人投資家の大勝ちが難しくなっていくのは間違いないと思う。

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