長期投資もAIに置き換えられるのか?

 という記事を書いたばかりだが、長期投資も結構やばいというような記事が日経に出たらしくて、その話についても少しだけ。

 前回書いたとおり、長期投資(とりあえず「年単位」と定義する)はそう簡単にAIに置き換えられることはないし、置き換えられたとしても、そのインパクトは短期投資ほど劇的なものにはならないと考えている。

 まず「長期投資が得意」と言ったときに、

  • 遠い未来を正しく予測できる
  • 気が長くじっと待てる

 という2通りの意味を分けて考える必要があるだろう。

 1年後の天気予報を、明日の天気予報と同じように当てることはできない。単に今はまだできないというのではなく、文明がいかに発達しても未来永劫できるようにはならないと信じる根拠がある。

 それはなぜか、というところまでは、このエントリではつっこめないが、長期的な経済や株価の予測が、長期天気予報と同等以上に困難なのは、ほぼ確実である。

 要するに、遠い未来を正しく予測できるという意味での長期投資は、人間にも不可能なのだ。それができるならバフェットはちゃんとAMZNを買えているはずだろう。そして、人類にできないことはAIにもできない。

 次に、後者は、当然AIの方が得意でありうる。というか、絶対に得意だ。”sleep 100 years”とプログラム(?)すれば、群集心理にも流されず感情的ミスも犯さず、じっと待てるだろう。

 しかし、長期投資において、人間が「気の長さ」を競う相手は、AIではなくそのAIを使う別の人間であるから、AIが人間よりそれが得意かどうかは、そもそも問題にならない。

 極端な話「100年間全く儲からないが101年目から毎年倍になる超AI」が実在したとして、あなたは使うだろうか? 他の人間にそれを使われたら脅威だと思うだろうか?

 では、AIによる長期投資は全く問題にならないかというと、もちろんそういうわけでもないだろう。

 大量のデータの中から、他の人がまだ気づかない相関にいち早く気づく、というような意味での長期投資は、AIの方が得意になりうる。

 具体的に言えば、たとえばシクリカルの大型株への投資で、個人投資家が市場平均を出し抜いて儲ける余地は、小さくなっていくのではないかと思う。

 逆に、今はまだデータ化されてい「ない」データを調べるとか、今はまだ存在し「ない」需要やサービスに気づいて、それを提供しようとしている新興小型株に投資する、とかいう形の投資チャンスは、まだまだ個人投資家、というか人間の手に残されるだろう。

 たとえば、どこで見た話か忘れたが、石油タンクの写真をドローンで撮影して、写真をAIで分析して石油の需給を予測して儲けているところがあるそうな。

 この話で重要なのは画像認識AIではない。すごいのはアイデアと、実際にドローン群を運用することの方であって、ドローン+写真を見る人間の方が、ドローンなしのAIより、当然良い成績を出すだろう。

 AIが「石油タンクをドローンで撮影しまくったら石油価格先回りできるんじゃね?」というアイデアを出してくれることはない。個人でドローン群の運用は無理でも、同じようにコロンブスの卵的なアイデアと調査で市場を出し抜く余地は、まだ当分あるはずだ。

(それすらなくなる日には、たとえどのような意味であっても、投資をする必要もなくなっていることだろう。)

 アラン・ケイ「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」という有名な言葉がある。一年後の天気を予測することはできなくても、一年後の天気をコントロールすることならいずれできるようになるだろう。

 個人投資家に求められる能力も、予測というより発明に近いものになっていくのではないか。おそらくそれは従来より難しい。その意味で、長期投資にもAIの脅威がないとは言えない。それこそ長期的に考えて対応していく必要があるだろう。

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