ジェラルド・M・ローブ『投資を生き抜くための戦い』18 株のスイッチングのメリット

18 株のスイッチングのメリット

 あるサイクルでの花形株は、次のサイクルではめったに主役とはなりにくい。
 多くの人は盛りを過ぎた株や、強気相場でもまだ未熟な株を持ち続け、ほかの株がどんどん上がるのを脇目に、お気に入りの持ち株が何も動かないでいるのを眺めている。
(中略)
 株を買っても、長い時間をかけて緩慢に下げれば、じらされて苦しい思いをするだけだ。それよりも、いったん売って損を確定してしまえば、覆水盆に返らずでくよくよしても仕方がない。
 短期だと、現実的な方法で正しい株が手に入りやすい。というのは、それは値動きと時価を基準にしており、見当違いの期待によるものではないからだ。短期トレーディングは、うまくやれば最も安全な投機なのである。

 これも「何も考えずにいてはダメ」という大原則のくりかえし。

 正しい方法は、買い乗せすることである。仮に私が1000株の購買力を持っているとする。(中略)株が上がると考えて、100株購入する。しかし、上がるべきときに上がらないどころか、まずいことに下がっていく。そこでそれを売却する。損失は、保険、経験、あるいは事始めの経費としてつけてもよい。
 次に、(中略)100株買う。それは私が期待したとおり上がり始めた。そこで私はさらに200株買い増す。まだ好調なので、さらに買い足す。そして、さらに……。
 理解してほしいのは、うまくいけば最初に小さなリスクを負うだけで、良い株のロングポジションを連続して持てるということだ。

 買い乗せでもわかりますが、いわゆるピラミッディングとか増し玉とかいうやつですな。

 株を売る最大の理由は、上昇が止まったか、悪くすれば下がり始めたからである。実際はそれよりもずっと複雑ではあるが。
(中略)
 言うまでもないが、何度も株を売っては、その株がその後、値上がりするのを目の当たりにすることになる。それらを買い戻してはいけないというルールはない。40ドルでスタートして100ドルで終わる株を何度も買っては売るほうが、40ドル払って持ち続けるだけよりもずっと安全である。もし買ったあとにすぐ下がり、40ドルで買っていたとすると、売らなければと思うほど心配はしないだろう。しかし最後のロットを100ドルで買ったとすれば、あなたはたちまち不安になるはずだ。そしてもしナンピンではなく利乗せしているとすればもはや買い乗せはしないし、もしも本物の下落に陥ったら、当分の間は近づかないだろう。しかし40ドルで買った株主は、株が100ドルに付けるのを見たあとでは、60ドルで買い下がりしてしまうかもしれない。

 このようなやり方は、ファンダメンタルズに基づく長期投資の立場から、はっきり否定されることがあります。覚えているだけでも、たとえば『投資で一番大切な20の教え』に、そのような趣旨の記述がありました。

 しかし、どちらかが正しくてどちらかが間違っているというものではなく、スタイルの違いと割り切って、どちらも正しいと考えるべきと思います。

 いつの時代でも、花形株を持ち続けて巨額の財産を築いたという例もある。けれどそれは問題ではない。どこまでが偶然の産物か、そしてどこまでが自分の判断によって得られた成果か? 私は、ほとんどがほかの条件と組み合わされただけの偶然であり、判断による部分は非常に少ないのではないかと思う。富を築いた人々だけでも珍しいのだ。保有株が全盛を迎えたときにスイッチングできる能力を備えた人物はさらに珍しい。

 長期投資の大当たりは偶然の要素が大きいか? そうではないケースも多そうな気がしますが、少なくとも、偶然であってもなくても(自分自身にとっても)その判断がつきにくい、ということは言えそう。

 一般人にとっての現実的な問題は――私が勧めるようにスイッチングしてより儲けるか、それとも長期の希望にすべてを賭けるか? 答えは、確実にスイッチングのほうに分がある。実際、私の方法に従えば、そのときの主力株を獲得しているチャンスがかなりあるが、オーソドックスなやり方では、そんなチャンスはほとんどないに等しい。

 ここも難しいところな気はしますね。あくまでこの本のスタイルで「投機」を行うなら、という条件はつけた方がいいかも。

 誰かがある株で資金を2倍にしたとか言ってきたら、どれだけの期間がかかったか聞くことだ。6カ月で2倍になったら、それは素晴らしい。しかし12年かかって2倍にしたのなら、年間わずか6%の儲けにすぎないのである。

 期間が大事というのはある意味当然ですが重要な話。(参考:長期投資は手段であって目的ではない

 利回りの例として6%という数字がよく出てくるのは、当時の金利がそのぐらいで、72の法則的に割り切りやすいからか?

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