那須正彦『実務家ケインズ―ケインズ経済学形成の背景』★★★★

実務家ケインズ―ケインズ経済学形成の背景 (中公新書)

 『伝説の名投資家12人に学ぶ儲けの鉄則』の参考文献で知ったもの。かなり面白かった。

 P44で「第1表 ケインズの収入・資産推移」とかいって、モロに収入と資産晒されてるのが、なんかワロタ。有名人は大変だな。

 孫引きでちょっと行儀は良くないが、印象に残ったところ3箇所メモしておく。

成功する投資のための三原則

  1. ごく少数の投資を慎重に選択すること。この場合、現在の価格水準を、過去数年にわたる実際のあるいは潜在的な価格推移との関連、並びに現時点での他の代替的な投資対象との関連で、充分考慮すること。
  2. 選ばれた少数の銘柄を、かなりまとまった金額単位で、価格の消長にかかわらず、成否の結果が明らかになるまで――たぶん数年間にわたるであろう――しっかりと持ち続けること。
  3. バランスの取れた投資ポジションを持つこと。できれば、反対方向に動くようなリスクでカバーすること。(たとえば、金鉱株を他業種の株の中に入れておけば、一般的な相場変動の場合、両者は反対方向に動く傾向があるといった具合に。)

 さらに付け加えて「もう一つ重要なルールは、二流銘柄を――それらは[長期的には]値上がりし得ず、その内いくつかは間違いなく下がるので――避けるということである。それ[二流銘柄の取得]が、平均的投資家が失敗する主たる原因なのである。」とし、さらに敷衍している。

(P92-93)

 この字数でものすごく濃密な内容。

「美人投票」の比喩と「カジノ」資本主義論

……玄人筋の行う投資は、投票者が一〇〇〇枚の写真の中から最も容貌の美しい六人を選び、その選択が投票全体の平均的な好みに最も近かった者に商品が与えられるという新聞投票に見立てることができよう。この場合、各投票者は、彼自身が最も美しいと思う容貌を選ぶのではなく、他の投票者の好みに最もよく合う容貌を選択しなければならず、しかも投票者の全てが、問題を同じ観点から眺めているのである。ここで問題なのは、自分の最善の判断に照らして真に最も美しい容貌を選ぶことでもなければ、いわんや平均的な意見が最も美しいと本当に考える容貌を選ぶことでもないのである。我々が、平均的な意見は何が平均的な意見になると期待しているかを予測することに知恵を絞る場合、我々は三次元の領域に到達している。さらに四次元、五次元、それ以上の高次元を実践する人もあると私は信じている。

(P175-176)

 有名な美人投票のくだり。

……その上、人生はあまり長いものではない。――人間本性は性急な結果を欲している。手っ取り早い金儲けには、特別な楽しみがあり、遠い将来の利得は、普通の人はこれを高く割り引くものである。玄人筋の投資の遊戯は、賭博的本能を全く欠いている人にとっては、耐え難いほど退屈できついものであるが、他方、そのような本能を持っている人は、この性向に対して相応の料金を払わなければならない。

(P176-177)

 これはよく言われてることだけども。

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