レイ・ダリオ『世界秩序の変化に対処するための原則 なぜ国家は興亡するのか』★★★

 少し前に読んだが、評価が難しくて後回しになっているうちにしばらく忘れていた。基本的には過大評価されていると思っている。

 国家の興亡や歴史については、別に間違っているとも思わないが、現在そんなに新味のある見解でもないと思う。

 だが私の視点では最大の問題は他にある。本全体に読者を特定の方向にミスリードしようとする意図が感じられることである。具体的には、

 自分の商売のためには中国と融和姿勢でいてほしい。そのためなら台湾なんて見捨ててほしい。

 という露骨に言えば一言で済むポジトを糊塗するために大半の労力が割かれているように見えるのだ。

 鄧小平の作った経済重視・集団指導・権力移行の体制を褒める(そのこと自体には賛成だが)わりには、それらをすべてぶち壊した習近平のことには触れないし、そもそも基本的に中国の政治問題は一切触れない。もちろん触れると直接的に商売に差し障りがあるのだろうから、そこまではまだ理解できる。

 だがさらに、アメリカの債務や格差や政治的分断を強調する(それぞれは正しいだろうが)一方で、これほどの知恵と知識のある人なら気づかないはずのない、米国の人口動態上のあるいは地政学的条件上の圧倒的強さにもほとんど触れようとしない。こちらについては直接的な差し障りなどあろうはずもないので、相当に疑問である。

 それでなくても記述の端々に、一昔前の(?)アメリカのリベラルにありがちな、オリエンタリズム的と言おうか、見下し半分憧れ半分の妙な中国持ち上げ感が感じられ、それが全体を歪ませているのではないか、という疑念が生まれずにはいられない。

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