イアン・エアーズ (著), バリー・ネイルバフ (著)。靴おじ氏のツイートから知って読んだ。
一般に株のリターンは債券より良い。よって可能な範囲で株のエクスポージャーを増やすのが正しい。しかし、一般的なポートフォリオ理論ではそうなっていない。
大抵は人的資本(≒将来の所得から可能な貯蓄)や公的年金が計算に入っていない。これらは債券的な性質を持つため、通常は(意図せず)圧倒的に債券に偏ったポートフォリオになってしまっている。
人的資本も計算に入れた上で、ポートフォリオ上の株の割合を一定に保ち、時間的にも分散して、エクスポージャーを大きくするのが、理論的な最適解である。
そのためには、若いうちに住宅ローンを借りて家を買って、不動産のエクスポージャーを大きくするのと同じようにすれば良い。具体的には、若いうちにはレバレッジをかけて株を買うべきである。
……という内容の本。考え方は以前にも株クラで少し話題になっていた記憶がある。自分も似たような内容のツイートをしている。私の感想はやはり以前のツイートと同じである。
本当は自分の給与を仕事のリスクで割って人的資本と考え、それと株との間でバランスを取り、若い頃はレバかけて云十倍にもなる株を手がけるのが正しいのだろうけど、最初からそれを理解して正しくやって、後にはちゃんとセーブできるような理性と精神を持つ人間は滅多にいないだろうから薦められない。
— 疑い深いトマス (@xFOMAx) April 8, 2020
理論上は完全に正しいのだと思うが、本人のスキルや、SAN値(ギャンブル依存症までのマージン)温存の観点から考えると、理論値通りそのまま実行するのは一般にハードルが高いと思われる。ややマイルドに従うのがちょうどいいのではないかと思う。
ケリー基準が理論的には正しくても、実際には半分ケリーぐらいで実行しろ、という結論によくなるのと同じようにである。
ただし、エクスポージャーを増やせという指摘には、この本の内容を超えて応用できる部分もあるのではないかと思う。たとえば子供のジュニアNISA(今はその制度自体はなくなっているが)で株を買う際には、安定株よりはギャンブリングな銘柄の方がいいのではないか……とか。
また、純粋な投資理論としての内容とは関係ない部分だが、アメリカンジョーク的な語り口が、基本そういうのが大好きである私でさえややノイズに感じるので、人によってはきついかも。
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