念力でチャートを動かす錯覚が生じる条件は何か

 昨晩、CPI発表に伴う某先生の戦いを追うためにドル円のリアルタイムチャートを見ていた。その際に、FXマンガ等でよく描写される(?)念力でチャートを予想できる(あるいは動かせる)的な錯覚を、生まれて初めて感じた。

 脳のパターン認識モジュールの過剰発火的なものであるのはわかるので、そうした錯覚が起きること自体には特に不思議はない。むしろ同じ感覚を過去に一度も経験したことがなかったことの方に興味を覚えた。

 すでに15年ほど株に関わっていて、短期取引もやったことがあり、当然リアルタイムのチャートも見たことがあるので、偶然とはちょっと考えられない。何か理由があるはずだと思う。

 差を生む要因として思いついた仮説は2つほど。

仮説1:株のチャートを表示するときには(因果的に先行することがわかっていて、上か下かのように単純ではなく、内容を念じることなど不可能な内容を持つ)板が、たいてい同時に見えているから。

仮説2:単純に更新が速いから。株のチャートではリアルタイムといっても、1分足程度までしか見たことがなかったと思う。(ローソク足の描画の更新そのものは秒単位であっても)FXの秒単位で動くチャートとは違いが出てもおかしくない気がする。

 厳密ではないが実験をしてみた。ティックごとのチャートが表示できるkabuステーションで、(出来高が多そうな)トヨタ自動車株のチャートのみを表示して眺めてみたら、FXのチャートと同様の錯覚は起きる気がする。そしてチャートが同じでも、板を並べて表示するとほぼ消える気がする。

 おそらく2つの仮説は排他的ではなく、両方成り立っているのではないかと思う。

 この錯覚を生むモジュールは、もともと動物・虫等の動きを予想・追跡するためのものだと思われる。秒単位のチャートは大きなギャップもなく、一体の生物が加減速や方向転換しながら動く姿と、その足跡のように見えるので、そのモジュールを発火させるのだろう。

 一分足のチャートはそもそも遅すぎる。一分に一度しか動かない虫や動物は普通いない。ローソク足の部分だけは毎秒変化していたとしても、そんな見え方をする生物はいない。従って今まで1分足以上の株のチャートをいくら見ても錯覚を経験していないことは不思議ではない。

 また板は数字(≒文字≒進化環境には存在しなかった存在)を読む必要があり、あちこちで急に出たり消えたりという現実の物理世界ではありえない挙動をするので、対応する本能的・生得的なモジュールなど存在しないのだろう。

 そちらに注意が分散されることが、チャートが同じであっても、板が見えることによって錯覚が抑制されるように感じる理由であろう。

 まだ実験してはいないが、おそらくFXのチャートであっても、株のチャートのような1分足以上の時間間隔のものであったり、秒単位のチャートでも注文の板(見たことがないし、あるのかも知らないが)が表示されていたりすれば、この錯覚は抑制されると考えられる。

 この考察の応用としては、もし数秒に一度以下の更新頻度のチャートを見る必要があって、他の条件が同じであれば、そのチャートはなるべく「虫の飛跡」や「動物とその足跡」のように見えない外見にカスタマイズすべきである。

 こうした本能的モジュールの発火が利益に資することは考えにくいので、おそらく認知資源の無駄にしかならず、抑制することは相対的に有益になると思われる。

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