ピーター・ゼイハン『「世界の終わり」の地政学 野蛮化する経済の悲劇を読む』★★★

 要点は、とにかくアメリカは地理的に恵まれすぎて今までも今後も最強だということ。(しかし、ここまではよほどイデオロギーで頭が茹だった人間以外にはそもそも当たり前であり、誰も反対してない。)

 そしてシェール革命で全て米大陸で完結するようになった結果、アメリカが世界秩序に無関心になって、第二次世界大戦後の世界秩序とグローバリズムが巻き戻って崩壊に向かうので、人口動態とあいまって基本アメリカ大陸とオーストラリア以外はお先真っ暗であるということ。

 言ってることは一見どれもまっとうに見え、語り口も軽妙で面白いのだが、私はこの本は現代版『成長の限界』だと思う。つまり冷静に客観的に現在から外挿したデータで悲観的未来を描いた結果、精密に間違ったことで悪名高い本、ということに(たとえばある程度の未来から見たときに)なる本だと思う。

 これだけ長く未来の話をしているにも関わらず、未来技術に関する話は最終盤で申し訳程度に数ページ分あるだけ。要するに基本この予想の世界では2025年どころか2020年ぐらいで人類はあらゆる科学の進歩を封印し、以後ここにあるものだけでやっていこうと決めたことになっている。

 実際にはこれだけとんでもない日進月歩が毎日続いている世界で、である。どんな予想をしているにせよ、あくまでそういう逆SFじみたパラレルワールドの未来だということ。それだけでもどう外れるかはともかく外れることだけは間違いない。

 それでもアメリカの内向き思考による脱グローバリズムは今後10年20年では重要になるファクターだと思うし、本としてはおすすめできる。前半の文明の発展の概史部分はなかなかうまくまとまっているし、面白いと思う。後半はトリビアルな話が多くて、前半のみの場合とあまり印象が変わらない。

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